2025年11月19日
有料職業紹介をしている取引先から、現在国外に在住している方から、配偶者の帰国にあわせて自分も日本企業で働きたいという引き合いがあった、という問い合わせを受けました。ChatGPTに聞いてみたら、「おk問題なし。みんなやってるからYOU、やっちゃいなYO!」という前向きな回答を得られたがやっちゃって良いか、とのことです。
良いわけないだろ!(怒)
大阪労働局 需給調整事業部による「職業紹介事業の運営について」の頁番号39(スライド41枚目)「よくある指摘事項~「その他」編~」において
「○ 取扱地域の範囲として届け出ていない国外等において職業紹介の一部(求職受理等)を実施している。(職業安定法第32条の12)」
として言及されている通りです。
ChatGPTが「やってます。大手も中小も普通にやっています。」というまでは正しいのですが、それ、違法です。
なんでChatGPTは馬鹿なのだろうと思って、改めて職業安定法を見てみたら、どこにも国外にわたる職業紹介への言及がないの。法律では厚生労働大臣がいろいろ決められることになっていて、その指揮下にある厚生労働省職業安定局が作った「職業紹介事業の業務運営要領」において、「国外にわたる職業紹介」が定義されて詳しく解説されているの。私の経験上、ChatGPTは、人間っぽいくだけた口調は得意ですが、孫引きが苦手のようです。Geminiは結論は引っ張ってこれますが、法令を全条文がまとまったテキストとして処理するようで、参照する条文番号がめちゃくちゃな場合がとても多いです。法令調査ではRAGの優位性が如実にあらわれます。
職業不詳の謎のおじさんをしていると、普通に仕事をしているだけで、実務ではガイドラインまで読み込まなあかんよ、AIみたいな浅い仕事しとったら通用せんよ、というテキストのネタ作りが捗ります。やはり私には学者よりも実務家が向いていたみたい。
冒頭の取引先に対する回答は、「ChatGPTは嘘吐きだから従前からの私の指導通りよしなに。今後も件数が見込めるならばいっそ取扱職種の範囲等に当該国を書き込んでも良いかもね」というものです。
なお、取扱職種の範囲等に国外を書き込むことがカジュアルに許されるようになったのは、新型コロナ禍のおかげです。労働局は、つい最近まで、「有料職業紹介の許可基準に事業所要件を設けているのは秘密守るためだろうが!オンライン面談で秘密守れんのか、ああん?」という態度でしたが、時代の流れに押し負けて、今はハローワークがオンライン面談をする時代です。オンライン面談が許されるならば取次機関を介さない国外へのサービス提供も日本法的にはイージーだよね、というお話。そして国外法制の調査という私の飯のタネがまかれて、調査ではけちょんけちょんにしたばかりのAIを頼る、というマッチポンプ的な稼ぎ方ができるわけです。
本当にAIのおかげで作業は捗り仕事のきっかけも増えてネタ帳も厚くなり、大助かりです。
さあ、消費者法の教材制作に戻るんだ。ネタが浮かびすぎて作業が間に合いません。