若い弁護士の間で企業法務と並んでエンタメ弁護士も人気のようです。言葉の意味はよくわからんがとにかくすごい華やかな響きなので、若い子はチャラいと思ってきました。
2025年5月、気づいたら、私自身がエンタメの仕事ばかりしていました。ゲームとかキャラクターグッズとかゆるキャラとかVtuberとかシンガーソングライターとか政党プロモーションとかです。エンタメの仕事を集めているわけでは全く無いのですが、私はお金が動くところに呼ばれるだけですので、エンタメはお金が動くのだと思います。
実は、私は、10年くらい前に、芸能事務所を立ち上げようとして失敗したことがあります。芸能界ではきちんと契約書が交わされないので、法律の力で所属タレントを守るというコンセプトでした。今もよくテレビで見かけるタレントも参加意思を示してくれていて順調な立ち上がりになるはずだったのですが、事務所とタレントとの間では丁寧な契約を締結できても、クライアントが契約書をとても嫌がったので頓挫しました。
その後、世間では、芸能事務所が所属タレントと契約書を交わしていないことが問題となりましたが、そこじゃないんだ、問題はクライアントなんだ、クライアントが事務所に対してふんわりしたことしか言わないから、事務所は板挟みを避けるためにタレントともふんわりとしか契約できないんだ。芸能事務所を攻撃するテレビ番組を見ながら、テレビ局よ、お前が言うな、と感じていました。2024年末に公取委による芸能実態調査が公表され話題になりましたが、なぜもっと早く、具体的には私が芸能事務所を立ち上げようとしていた際に調査してくれなかったのか。
時代は流れ、ようやく私の出番となったようで、大変結構なことです。どうしてかなと考えていたら、エンタメの主戦場がテレビからインターネットに移ったからだと思い至りました。ゲームはダウンロード配信、その開発費用を集めるのはクラウドファンディング、ゆるキャラはSNS、VtuberはYouTube、シンガーソングライターの楽曲もネット配信、政党もWEB広告を打つ時代です。だから契約書が受け入れられるのです。時代が変化する際には法律家の需要が発生するので、弁護士業は常に成長産業だと実感しています。
それでも不景気だと主張する弁護士が多いのは、民事紛争案件しか扱わず、せっかく活動領域が広がっているのに、そこに乗り出していかない弁護士が多いからです。エンタメ弁護士になりたいと考える若い弁護士は、新しい領域にチャレンジせずに不景気だとぼやくだけの弁護士よりも、よほど真剣に将来を考えていると思いました。チャラいと思ってごめんなさい。そもそも私は水死体のように海を漂っているだけなので、偉そうなことを言う資格はありませんでした。