#法律の話
2025年8月22日
法律のことも書くぞと決めたらいくらでもネタは出てきます。ネタを出すというよりも、日頃の仕事を紹介すれば足ります。
現在開発中のゲームの利用規約とプライバシーポリシーを作成しておったのですが、ガチャを回して最高レアのキャラクターを揃えてくれたユーザーに豪華プレゼントを用意する、という無邪気な仕様を示されました。
それ、コンプガチャです。だめなやつです。
ですが、ゲーム会社ももちろんプロですから、無邪気と言ってもちゃんと他社事例を調べて言ってきています。ならばここからが法務の腕の見せ所です。
まず、コンプガチャがダメな理由のおさらいです。
不当景品類及び不当表示防止法
(景品類の制限及び禁止)
第四条 内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
参考(平成 8年2月16日当時の景表法)
(景品類の制限及び禁止)
第三条 公正取引委員会は、不当な顧客の誘引を防止するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
懸賞による景品類の提供に関する事項の制限
(昭和52年3月 1日公正取引委員会告示第 3号)
改正 昭和56年6月 6日公正取引委員会告示第13号
平成 8年2月16日公正取引委員会告示第 1号
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第三条の規定に基づき、懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和三十七年公正取引委員会告示第五号)の全部を次のように改正する。
1 この告示において「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう。
一 くじその他偶然性を利用して定める方法
5 前三項の規定にかかわらず、二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供は、してはならない。
かつては公正取引委員会が、今は内閣総理大臣が、ダメな景品類の提供方法を定めることができて、その中で、2種類以上のガチャの組み合わせによる景品類の提供、つまりコンプガチャはダメ、ということが定められておるわけです。
附 則 (平成二一年六月五日法律第四九号) 抄
(不当景品類及び不当表示防止法の一部改正に伴う経過措置)
第六条
2 施行日前に公正取引委員会がした旧景品表示法第三条の規定による制限又は禁止は、施行日に内閣総理大臣がした新景品表示法第三条の規定による制限又は禁止とみなす。
そして以前公正取引委員会が禁止したことは未だに効力を保っていると。過去の法律や告示まで調査せなあかんのが法務部員の辛いところですな。
ほいで、その運用基準は次の通り。
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準
平 成 2 4 年 6 月 2 8 日
消費者庁長官通達第1号
4 告示第五項(カード合わせ)について
(1) 次のような場合は、告示第五項のカード合わせの方法に当たる。
携帯電話端末やパソコン端末などを通じてインターネット上で提供されるゲームの中で、ゲームの利用者に対し、ゲーム上で使用することができるアイテム等を、偶然性を利用して提供するアイテム等の種類が決まる方法によって有料で提供する場合であって、特定の二以上の異なる種類のアイテム等を揃えた利用者に対し、例えばゲーム上で敵と戦うキャラクターや、プレーヤーの分身となるキャラクター(いわゆる「アバター」と呼ばれるもの)が仮想空間上で住む部屋を飾るためのアイテムなど、ゲーム上で使用することができるアイテム等その他の経済上の利益を提供するとき。
(2) 次のような場合は、告示第五項のカード合わせの方法に当たらない。
ア 異なる種類の符票の特定の組合せの提示を求めるが、取引の相手方が商品を購入する際の選択によりその組合せを完成できる場合(カード合わせ以外の懸賞にも当たらないが、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)
イ 一点券、二点券、五点券というように、異なる点数の表示されている符票を与え、合計が一定の点数に達すると、点数に応じて景品類を提供する場合(カード合わせには当たらないが、購入の際には、何点の券が入っているかが分からないようになっている場合は、懸賞の方法に当たる(本運用基準第一項(4)参照)。これが分かるようになっている場合は、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)
ウ 符票の種類は二以上であるが、異種類の符票の組合せではなく、同種類の符票を一定個数提示すれば景品類を提供する場合(カード合わせには当たらないが、購入の際にはいずれの種類の符票が入っているかが分からないようになっている場合は、懸賞の方法に当たる(本運用基準第一項(3)参照)。これが分かるようになっている場合は、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)
コンプガチャ(カード合わせと呼ばれていますが、コンプガチャのことです)には許される場合があって、ア購入時の選択によって完成できる場合、イ点数の累計で完成できる場合、ウ被っても完成できる場合、がそれに該当します。
私がやっているゲームにも図鑑完成特典が実装されており、それはコンプガチャです。しかし、ガチャを回し続けるとポイントが貯まって、それを消費することで好きなキャラを選択できたり、たまにキャラクター選択チケットが販売されたりしておるわけです。これらはアとかイとかウに該当しとるわけですな。だから公取委に怒られない。
以上踏まえて、法務部員には、コンプガチャやるんなら選択チケットを販売せなあかんで、そうでなくとも残念ポイントでも実装して外し続けたユーザーを救わなあかんで、と回答することが求められておるわけです。それコンプガチャだからやったらあかんぞ、とか返す法務部員はクソなのです。若手法務部員には、法律の結論なんて聞いてないからなんか知恵をひねり出せ、と伝えたいです。