#教育の話
了解は失礼、印鑑はおじぎさせる、などのマナー講師が次々と開発するマナーに価値がないことは多くの人がわかっているようですが、服装がどうだ、名刺交換のやり方はこうだ、などの定着したマナーよりも大切なマナーがあります。私がいつも違反に腹を立てているマナーは、相手の発言内容を覚えること、提案を具体的にすること、の2つです。
「それ以前やり方教えたよね。たしか先々月くらい。議事録確認してみて。」「ありました。おっしゃるとおりです。申し訳ございません。」こんなやりとりが何回も続くと、温厚な私もおこですよ、激おこ通り越して冷気発しますよエターナルフォースブリザードですよ。
議事録取ってるだけマシなんですけど、MTGのメモは取締役会議事録とは違うんですよ。目的は意思決定の証拠ではなく、議論の内容の記憶喚起なんですよ。だったら前回のコピーが議事録作成のスタート地点なんですよ。議事録取ることが仕事じゃなくて、仕事に役立てるための議事録作成なんですよ、わかりましたかこのバカちんが。
おじさん打ち合わせにはノートPC持ち込んで、カタカタカタカタずっと文字を打ってますが、その打ち合わせの最中にも読み返しています。次の打ち合わせでも、前回おっしゃったことですね、ってちゃんと言えます。案件が一段落するまで一つのテキストファイルに書き足していってるからそれができるんです。それぞれの工夫があって然るべきなので、私と同じことをしろとは良いませんが、メモを取るにも目的意識を持てということです。
「先方との話し合いはなんかいい感じで終わりました!」「で、何が決まったの?」「これからです!」
まずは雪解けという局面ならばいい感じにすることも成果ですが、すでにいい感じの取引先といつまでもいい感じをキープして何が得られるのか。せっかく時間を取ったのに何も決まらないことが続けば、付き合っても時間の無駄だと思われて関係終了です。家に帰るまでが遠足、クロージングするまでが商談って小学校で習わなかったんですか。私は習いませんでした。
おじさん、色々な場所で色々なクロージングできない族を見ていてわかったことがあります。優秀な営業マンがクロージングできるとは限らないのです。営業マンというのは、売るべき商品やサービスが与えられていて、その良さを伝えて買ってもらうことを目的に動いています。顧客に考えてもらうのが仕事であって、自分で考えることが仕事ではありません。
しかし商談になるとこちらも考えなければなりません。これが難しいらしいのです。私など、他の人間が何を考えているかはわかりませんが、自分の考えは制御下にありますから「わしはこれで満足する。そっちはどないや。引っ張るようなら打ち切るで。限られた時間よく考えてな。」とこちらの考えをボールにして投げつけます。自分の手元にボールがあると落ち着かない性分なので、ガンガン投げます。さながらピッチングマシーンのように提案します。それは決して失礼なことではなく、相手にとっても検討材料を与えられているから時間が無駄にならないということなのです。大切なことは互譲の精神です。自分の目的を果たしつつ相手にもメリットがある提案が出せるかが問われます。
相手の発言内容を覚えない、具体的な提案をしない、どちらも相手の時間を尊重しない尊大な振る舞いですが、それを行うのは、丁寧な議事録を作成する子だったり、営業マンとして数字を残してきた子だったりします。そんな、一見優等生が守れないのがビジネスマナーなので、奥深いなと思いました。ノートが綺麗な子は勉強ができないと言いますが、根は同じことだと思います。