以前、友人の親戚である中学生の夏休みの宿題(大人への職業ヒアリング)に協力した際に、弁護士に必要な資質として、体力と好奇心を挙げました。数年後に振り返っても、昔の私もなかなかよく考えていると思いました。
弁護士にとって体力が最も重要です。実務は体力勝負です。典型例は刑事弁護で、夜中や休日にも緊急出動して短期決戦に挑むことを求められます。家事事件を扱っていれば時間との勝負ばかりですし、企業法務でも今日中に内容証明を起案しろということがあります。要求されるのは絶好調時の最高のパフォーマンスではなく、求められたときに最低限のパフォーマンスを発揮できることで、それを支えるのが体力です。
だから司法試験も二回試験も頭の体力を問う試験になっています。優秀なのに合格しない者は大抵体力不足です。体調が良いときに2時間集中して良い答案を書けても通用しません。本番で求められるのは、決められた日程で、1日3回、各2時間の集中を強いられる中でも安定して発揮できるパフォーマンスです。努めて客観視すると、求められる体力のハードルの高さはかなりのものです。
なお、司法試験と二回試験においては体力以上に筆記速度が要求されますが、これは弁護士としては全く役に立ちません。2026年から試験のIT化が始まるようで何よりです。
好奇心は上を目指すための武器になります。成功している先輩たちを見ていると新しいことに貪欲です。後輩と積極的に接するのも若い考えを吸収するためです。弁護士は日常的に法改正対応に追われますが、どのような趣旨で改正されて、どの程度まで趣旨が実現されたのか、を知ることを楽しいと感じられなければやっていられません。勉強という行為が好きな人はいないと思いますが、新しいことを学ぶことが好きな人はいるはずで、そのような人が弁護士に向いていると思います。
私は体力には自信があり、体調を崩すことは滅多にありませんし、若い頃は最長で40連勤くらいしても元気いっぱいでした。好奇心を原動力としており、知らないこと、他人がやったことがないことに強い興味を抱きます。だから弁護士に向いているのだと思います。残念ながら、私は職業としての弁護士になりたいと思ったことが一瞬たりともないのですが、もし私がやる気を出せばきっと弁護士として成功すると思います。
結局、いちばん重要なことはやる気です。体力と好奇心だけあっても私のような職業不詳のイロモノにしかなれません。どこかにやる気が落ちていないものでしょうか。いつも下を向いて歩いているのに、お嫁さんもやる気も落ちてないので心が折れそうです。