2025年10月11日
若手弁護士にお金のアドバイスをする仕事をしました。恥ずかしいので名前は出しませんでしたが、弁護士向けサービスを提供している会社の販促グッズ作成のお手伝いです。お金の話をしてお金がもらえるのは実に良い身分です。
以前、先輩から、若手に独立のアドバイスをしてやってくれと頼まれたのですが、「開業費用をふんだんにかけたから参考にならんすよ」「今の相場は300万円くらいだけどその倍くらい?」「いいや。桁違い」「あ、参考にならないからいいや」という会話の末に断念しました。
私の開業費用が桁違いなのは、事務所を購入したからです。この事務所は値上がりし、今は含み益が出ています。私は経費削減のための投資であると同時に不動産投資をしました。
ただ、私のように不動産投資をしなければ、200万円+不動産賃貸の際の敷金や保証金で足りると思います。私は備品一式を200万円以内で揃えました。相場の300万円というのは適切な水準です。
それよりもお伝えしたいのは、売上目標と経費の目安です。
学生時代に、当時の10年選手くらいの先輩から、年間売上2000万円ないと辛い、事務職員2人と家賃で1000万円以上の経費は簡単に出ていく、という話を聞いていました。この数字はとても普通で、弁護士の収入(売上)と所得の平均値と中央値の間に収まります。
その後、月間100万円の売上が見込めるならば独立できると言われるようになりました。年間売上1200万円で、おそらく、事務職員1、シェアオフィスで、経費を600万円以下に抑え込む計算です。
私のように事務職員なしの完全一人事務所の場合、経費は年間200万円に抑え込むことが可能です。生きていければ良いと考えれば、月間売上50万円でも独立して生存は可能です。当初の私はノープランでしたからこれを下回っていましたが(正確には、独立直後に大口顧問先が見つかり簡単にクリアしたもののすぐにケンカ別れして、ケンカ別れ後は下回る時期がありましたが)、貯金がそれなりにあったので不安はありませんでした。
私は節約とは無縁なので、独立当初は貯金が年間200万円くらい溶けましたが、売上が伸びるにつれて取り崩す額が減っていき、このままではあと何十ヶ月で貯金ゼロ、が、このままでは数十年で貯金ゼロ、つまり逃げ切り、となっていったので、心は楽でした。そうこうしている間に貯金ができるようになり、独立10年後の今は、独立前よりも貯金が増えています。
そもそも、売上なんて自分でコントロールできないのです。
だったらやるべきことは2つです。
独立前に貯金をすること。私は独立以前は馬車馬のように働き、毎年数百万円を投資していました。運よくリーマンショックからの回復基調に乗れたので、それが潤沢な開業資金になりました。
独立後は経費を削減すること。今の私は経費計上に必死で体力の限界まで飲み歩き、仕事で使えるかもしれないガジェットを買い漁っていますが、それは余裕ができたからです。事務所賃料は経費です。その会議室は常設する必要があるのか、弁護士会館ではだめなのか、考えて部屋を選ぶ必要があります。事務職員の人件費も経費です。事務職員を雇うことによって捻出した自分の時間で人件費を上回る売上をたたき出せないならば雇うべきではありません。
やることをやれば、月50万円の売上でも生きていけると考えれば、独立のハードルがとても低く感じられるのではないでしょうか。法律相談名簿や当番弁護にできるだけ多く登録するだけでも達成可能な水準です。
弁護士は信用商売です。自分の看板を掲げ続けていれば、中身はなくたって立派に見えるようになるものです。私も独立して3年くらいは、どうせ食えていないだろうと足元を見られている気がしていました。5年で対等に話せるようになり、10年経てば頼られる立場になります。大切なことは生き残ること、そして、将来を見据えることです。仕事がないイコール暇なのですから、人脈を広げるために色々なところに顔を出したり、私ように資格を集めたり(今は不動産の資格を活かせていませんが、それで食べていた時期もあります)、種を蒔くチャンスでもあります。売れない弁護士だからこそできることもある、と考えると気持ちが楽になると思います。