2025年12月2日
中小規模事務所運営の研修を受けました。
やっぱり成功している弁護士はすごいですね。
まず、独立に際して目標があり、プランが有る。
どんな弁護士になりたい、どんな事務所を作りたい、というビジョンに沿って事務所の立地と規模を選び、予算と相談しながらIT化を進め、広告や集客方法も工夫の歴史と戦略があります。ブランディングを意識して、採用の戦術もあります。試行錯誤を繰り返そうとも、目線が定まっているから方向性がブレない。
当たり前の話ばかりで、だからこそ、信用できる話でした。王道にまさるものなしです。
翻って私はどうか。
サラリーマン生活楽しいな。けど、勤務先に上場廃止されたら流石にいられないや。
今と同じくらい楽しく働ける会社はないだろうな。会社組織であっても人生を預けることにはリスクが有るな。
企業の仕事と言ってもやりたいのは法律よりも経営なんだよ。事業を詰めていくミクロな仕事と組織全体のガバナンスというマクロの双方に関わりたい。オペレーションレベルでの法規制対応と、ルールメイキングのどちらでも法律も活かせます。
WEBサイトなんて作ったら客が来るだろ、という元ボスの言葉は格好いいな。集客せずに食べていくには固定客、それもある程度以上の規模で未成熟、まさに脱皮しようという組織の仕事がしたい。
とりあえず独立して食べられないようだったら就職しよう。なんとかなるやろマイペンライ。
目線なんて無い。その結果動かない。何もアクションをしない。実にけしからん。喝ですよ喝!大喝(おおかつ)!
「座して仕事を待つことなかれ。動かなければチャンスを逃す。」という教えをよく聞きます。人間はチャンスが目の前にあれば動きますが、準備不足ならばものにできません。入念な準備こそが成功の秘訣だということです。
とはいえ、私はチャンスに遭遇したこともありません。あるいは見逃しているのかも知れません。それでも、チャンスを認識しなければ逃してしまったという後悔もありません。だから私の心はいつも穏やかです。我が心既に空なり。
私は昔から透明人間になりたいと思って生きています。わいせつな意図からではなく、他人に気づかれずにひっそりと暮らしたいという願いです。
世の中には、なにやら透明人間扱いを嫌がる人が多いようで、透明人間扱いされてしまう、という悩みもあるらしいのですが、私に言わせれば贅沢な悩みです。
私は働きたくないでござるという首尾一貫した方針を示しているのに、学生時代からずっと「柿沼くん、悪いんだけどさ」。悪いってわかってるなら頼むな。その結果、待ちどころか拒否の姿勢でもそれなりに忙しく生きています。
人を選ぶ立場になればわかりますが、世の中には仕事を任せるに足る人間が少ないので、任せるに足る人間を捨て置く余裕はありません。現に研修中にも私には新件が入ってきました。人生そんなものです。私は泰然自若の悟りを得ています。
しかし、多くの弁護士が私には理解しかねるロジックの中で生きています。
研修中にも、集客に苦戦しているという聴講者からの質問が出ていました。
稼ぎとは売上マイナス経費です。
売上は自分ではコントロールできませんが経費はコントロールできます。
集客に苦戦、というのは、売上がコントロールできない、という意味であり、そんなことは当然です。
本来の問答はつぎのようなものであるべきです。
「このくらいの集客しか見込めないから経費を減らしたいのですが、どこから削ればいいですか?」
「どこから削るかどこまで削るかという発想がナンセンス。削れるだけ削りなさい。」
「でもあなた無駄遣い多いですよね?」
「おだまりなさい!私は憎き税金と戦っているのです!」
皆さんにお伝えしたいのは、ミニマム経営は良いぞ、ということです。
経費がかからない。売上に追われない。働かなくても良い。これ。このコンボ。余裕ができたらその分浪費する。楽しい。
戦略的に事務所を大きくしていくことはもちろん素晴らしいことですが、働かなくても良い状況に甘んじる生き方もなかなか良いものですぞとこっそり訴えていきたい。弁護士が稼げなくなったと悲観的に言われていますが、私は弁護士があくせく働かなくても許されるようになったと肯定的に捉えています。
2025年12月5日追記
あらためて読み直したら私が何も考えていないみたいですので、補足します。
私が集客しないのは、何も考えていないからではなく、むしろ、考え抜いた結果です。
せっかくなので、独立に際しての私の戦略を補足します。
掲げ続けた看板には信用が宿ります。しかし、信用が宿るまでが大変なので潤沢な資金を用意しました。リピートと紹介を期待するには顧客満足度を高める必要があります。そのためにはスキルが必要です。潤沢な資金を用意する中でスキルは磨かれます。そこで得たスキルはお金になるものだからです。
私はお金もスキルも身につけてからの独立でした。それがないならば独立する資格はないと考えています。
短期間でお金とスキルを身につける方法は簡単で、死ぬまで働くことです。おそらく過労死は疲労よりもストレスが原因であり、自由意思による前向きな長時間労働ならば、若ければ死ぬまで働いても死にません。
顧問先と良好な関係を築けている先輩方も、60歳を過ぎると顧問先が若手弁護士を探し出すそうです。そして気づかぬうちに乗り換えられてしまいます。私はいつも相手方弁護士の経歴を調べるのですが、イケてる経歴の70歳くらいのベテランが、しょっぼい相手についていることがあります。そういうことかと残念な気持ちになります。
事務所を組織化したボスはイケイケのままです。私の周囲のほとんどはそれを狙っています。私は組織に馴染めない男なので、組織化せずに老後に切り捨てられない方法を考えました。そして、ゲーマーの発想で、固有スキルと実績・肩書を集めることにしました。採算度外視で事業支援の仕事を受けているのは、それが60歳を過ぎてから効いてくると信じているからです。
私は潤沢な資金を用意してから独立し、徹底して将来のことしか考えずに事務所経営をしてきました。そのため、残念極まりない売上推移なのですが、10年経てば独立時からみた将来です。だから近年は余裕ぶっこいて生きているし未来の見通しも明るいです。集客しなくても食べていける、ではなく、集客しなかったから集客しなくても食べていける業態になった、ということです。
集客成功や事務所規模拡大以外にも勝ちパターンはあります。私が、自身の能力にのみ依存したミニマム経営を徹底しているのも勝ちパターンの一つだと信じているからです。本当にお伝えしたいのはそういうことであって、自分の能力適性を活かした勝ち筋を探そうぜ、ということです。だから便秘に悩む方には毎日一本のふかし芋をお勧めします。