2025年11月17日
司法修習時代の飲み会に参加してきた婚活女子裁判官は、合コンでは銀行員だと名乗っているとのことでした。裁判官だと敬遠されてしまうという気持ちはわかりますが、せめて公務員やろ。追い詰められた人間は平気で嘘をつくのだと学びました。
私も追い詰められていますが、嘘はつきたくないので、職業を聞かれたらどうしようか真剣に悩んでいます。
結構前になりますが、当時30代の弁護士仲間同士で、職業を聞かれたらどう答えるか、という話になりました。皆が自由業と答えていたのですが、決まって、具体的には?と聞かれてしまい、結局もったいぶっているようなことになってしまう、という話をしていました。弁護士と名乗ると変な期待をされるから名乗りたくないというのは弁護士共通の本音だと思います。特に私は弁護士らしい仕事をしていないので、相談や紹介を受けても仕事につながりません。
自分に何を期待して欲しいか、という観点から、最近はフリーランスの法務部員と名乗っています。若手法務部員の養成をリアルガチにライフワークとしており、なんで弁護士が法務部員のことを教えるの、という疑問に答えるための措置です。
私の仕事はマイブームに支配されているのですが、それでも企図している大きな方向性はあります。私はもともと学者になりたくない一心で弁護士資格を得ましたが、学問が嫌いというわけではありません。むしろ学究の徒であるあまり、学者の方法論を社会で実演して学問は武器になると示したい思いからいつも最前線にいます。経験値を稼ぐために国会議員秘書をしたりサラリーマンとして月100時間以上の残業を続けたり複数企業から法務のアウトソーシングを受託したりし続けた結果、事例がたまったので、今はそれをテキストにしています。研修準備と教材制作に割く時間が増えるとともに、法務というよりも新規事業のコンサルのような仕事が増えて、相続の仕事を増やそうと思っているのでそちらのまだお金にならない種まきにも注力しています。相続対策は夜間や土日に相談したほうが依頼者に喜ばれるので、平日日中が拘束される企業の仕事と相性が良いのです。
弁護士らしい仕事→週0時間。ただしフルスペックで法務アウトソーシングに対応するには弁護士資格が必要。
法務部員らしい仕事→週15~20時間。契約書チェック、法令調査、法律相談など
学者っぽい仕事→週10~15時間。フィールドワークの成果を平易なテキスト化している。
新規事業コンサルっぽい仕事→週5~10時間。元々の学術的な専門分野がようやくお金になってきた。
相続対策コンサルっぽい仕事→週0~5時間。種まきに注力している。
弁護士会関係の強制労働→週5~15時間。いい加減にくたびれ果てている。
今はこんな感じ。弁護士会関係は中間管理職の年次なのでとてもストレスがたまります。もう少し偉くなれば、納期を守らないやつは外すという効率化が果たせるので、今が踏ん張りどきです。
ともあれ、弁護士ではないから法務部員、というには、学者要素、コンサル要素が強くなりすぎて、どのように名乗ればよいかわからない状況です。
私が人生のロールモデルとしているのはサラリーマン時代の社外役員です。その方は企業の企画開発を皮切りに、大学教授に転身しながら複数企業で社外役員を兼務し、趣味のガジェット・レビューのWEB連載も持っているという自由人で、マルチパートタイマーを自称されていました。
フリーランスの法務部員というのは、マルチパートタイマーを意識した名乗りだったのですが、いわゆる「謎のおじさん」化が進行しています。今の私は目標に向けて積み上げた成果なので誇れるはずです。にもかかわらず、社会から後ろ指を指される。問題の根源は家庭がないことであるように思えてなりません。「あの独り者のおっさんはなにしとるかわからんな。犯罪者予備軍だ」という現在の私に対する評価も、家族ができれば「家族を食べさせるために色々頑張っている」に転じると思うのです。正業に就かない独身男性に向けられる社会的評価は厳しいものです。婚活女子裁判官のように嘘はつけませんが、せめて会社役員と名乗ろうか。しかし「複数の企業で役員をしています」と名乗ってもうさんくさい。せめて弁護士らしい仕事をしていれば「弁護士です」と名乗れるのですが。自分の職業で悩んでいます。