2026年2月24日
急拡大中のベンチャー企業の経営合宿に参加したのですが、法務部員の獲得が急務という議題が出ていました。現在私に外注あるいはエスカレーションしている仕事の多くは内製化できるのではないか、という議論です。契約書添削を内製化して私が私の本業に注力できる環境を作りたいという内容で、その方向性は正しいです。私の仕事はなんなのかというと、ガバナンスとフィックスです。
経営者を取り締まるのがガバナンス、経営者が従業員を統制するのがマネージメント、と主張する論者もいますが、センスの悪い言葉遊びも大概にせいと。ガバナンスは統治、マネージメントはやりくりです。もちろん経営者を取り締まることがガバナンスであることに異論はありませんが、経営者が従業員を統制するための仕組みづくりだってガバナンスです。私はこっちのガバナンスが得意です。
私のガバナンスは、ワークフローや業務マニュアルを作る仕組み屋さんやシステム屋さんと呼ばれるお仕事です。私は元々マーケ屋で、モデリング技術を身に着けてきましたから、他の弁護士には得難いスキルであるはずです。最近のエンジニアにはできない仕事でもあります。
私にとってのガバナンスはシステム屋さんという属人的スキルを使っての非属人化と透明性確保の促進です。非属人化を促進しているのに一人事務所にこだわるのは、当事務所の競争力は属人的な能力に拠っているからです。「非属人化を促進できるスキルは属人的というジレンマ」ですね。だから私の客層は、非属人化を推進したい、組織化したい組織であり、私はそれこそが伴走支援や中小企業法務だと考えています。しかし、それらに注力しているはずの弁護士会が実際に行っているのはやんちゃなおっちゃんたちの喧嘩の助太刀です。
なお、先述したガバナンスとマネージメントを使い分けて儲かっている人は、やらかした大企業だけを相手にしています。外部からの監視が商売です。ところが、やっている仕事は監視どころか矛先の向け変えです。
私は権威主義者ですから、権威ある方が私と同意見だととても安心します。
https://note.com/hideaki_kubori/n/n16ead684ec25
僭越ながら引用させていただくと
今回は、相手側タレントを加害者にして、責任転嫁した形となりました。…
『上納』があったのかなかったのか、結論が出ていないのに、匂わせて、誰かを犯人にするなんていうことは、第三者委員会がやるべきことではありません。…
結果的に『連動』してしまった感のある『第三者委員会』と『メディア』…
ターゲットではないところにターゲットを据えてしまったために、第三者委員会が人権侵害をしたのではないか?タレントの人権はどうなのか?という問題にもなりました。
といったあたりが、私が一番怒っていることと一致します。私は、私の仕事こそが、本物のガバナンスだと誇りを抱いています。
今回は「非属人化を促進できるスキルは属人的というジレンマ」のお話です。
私が欲しい法務部員は、私の能力のうち下流部分の一部を忠実に代替してくれる人材です。それって、システム化によって実現できてしまうお仕事です。ぶっちゃけ、AIで十分。ただし、だからこそAIを使いこなせる人材が欲しいです。
検索性や参照性が高いワークフローを構築すれば、私の過去の仕事の真似っ子がしやすくなります。AIへの指示が出しやすくなります。それを忠実に実行してくれる素直な子が欲しい。法務機能を担ってくれる子は欲しいけれど、経験法務部員なんて要らないのです。
実はそれって私だけの意見ではありません。事業の初期段階では、属人的なスキルに期待せざるを得ず、経験法務部員が必要です。私の仕事の入口も多くの場合これです。そして、経験法務部員の属人的スキルによって事業が軌道に乗ってきたら、規模拡大のために、属人的スキルを非属人化してナレッジ共有したいというフェーズになります。このフェーズに至った企業は、経験法務部員よりも、ポテンシャル人材を好むようになります。
先述の企業はまさにそのフェーズなのです。求められているのは私の属人的スキルのナレッジ共有、非属人化であり、それができる私がいるのですから、経験法務部員なんて要らないのです。
ただし、ナレッジ共有は万能ではありません。それが私のガバナンスと並ぶもう一つの得意技であるフィックスをするフィクサー、もみ消し屋の領域です。
私がいくらガバナンスを頑張っても、やらかす従業員はやらかします。人が多様性を備える以上、エラーの発生は仕方がないことです。AIだって、人間を目指した結果、意図的にエラーを再現しようと、確率的ゆらぎを採用しています。
困ってしまうのが、従業員という組織人が起こしたエラーは、組織に帰責されることです。エラーの解消だけでなく、組織的な免責も考える必要がある。それが労働法務の難しさです。
手っ取り早くエラーを解消しようと、やらかした従業員を排除しようとすれば、労働者側弁護士が出てきます。残念ながら労働者とは法的な強者です。正義をなしたい企業にとっての巨悪です。だから私は、弱者の戦い方を徹底し、長期戦を仕掛けて、労働者側弁護士の介入可能性を消します。労働弁護士の中でも使用者側弁護士として信用され、早期に情報共有されるようになった弁護士しか持ち得ないのが、このフィックススキルです。労働問題だけでなく、契約トラブルなどでも活かせます。
しかし、フィックススキルをナレッジ共有してしまえば、組織はギスギスの疑心暗鬼になります。だから属人化させておく必要があります。そのため、フィックススキルは本来的にアンコモンあるいはレアだと思います。
そういうわけで、今日もせっせと非属人化したい法務部員のスキルをまとめています。それがライフワークなのですが、考えれば考えるほど、近年では、法務部員にこそAIを使いこなせるスキルが必要だと思い知らされます。
今日も、弁護士会から弁護士連合会への人事推薦の場で、候補者が、AIが弁護士業務を侵襲するリスクを熱く語っていました。正直、「ああ、貴方は生き残れないコミュニティに所属しているのね、ご愁傷さま」と思いました。私はAIのお陰で仕事が増えるし効率は上がるし人を育てることも楽になったし、良いこと尽くしです。今日も中国のゲーム規制の射程をAIを使って調査していました。私はドメスティック弁護士なのですが、経営合宿では海外事業部のメンターをしていたし、AIのお陰で日本法以外も日常的に扱えています。ただ、AIは不勉強な弁護士が思うほど万能ではないので、AIを使いこなすには、AIの仕組みを理解したうえで、AIの欠点に注意しながら、AIの長所だけを活用するためのスキルが求められます。だから経験法務部員よりも私が教えるAIの使い方に忠実に従ってくれる子が欲しいのです。今回は、欲しいのは法務部員だが法務部員の能力は要らない、というお話でした。